№61 社会保障と財源に関する問題点
2013.11.25 社会保障と財源に関する問題点
一.社会保障の定義
「社会保障」とは、国が中心となって、生活保障を必要とする人に対して、一定の所得ないしサービス(医療及び社会福祉サービス)を公的に提供することです。
二.社会保障給付費の財源
社会保障において、受給権者に保障されている権利ないし給付は、その費用負担についての財政的裏付けがあって初めて具体的に現実のものとなります。給付の在り方をめぐる議論も、負担ないし財源の問題とセットでなければ十分な説得力を持ちません。社会保障の主な財源としては、社会保険料、租税、受益者負担(一部負担)、さらに、積立金の運用益、借入金などがあります。
三.日本の社会保障の特徴
日本の社会保障の特徴として、次の点が指摘されています。
① 社会保障給付費が他の先進諸国に比べて相当に「低い」水準にあること。社会保障給付費の対GDP比(93年度)は、スウェーデン38.5%、フランス27.9%、ドイツ25.3%、イギリス21.1%、アメリカ15.0%(92年)に対し、日本は、11.9%に過ぎない。
② 社会保障全体に占める年金の比重が、先進諸国の中で最も大きく、また逆に「失業」関連給付と、「子ども」関連給付の比重が際立って低いこと。
③ 社会保険の枠組みの中に相当額の税が部分的に投入され、(例えば基礎年金の3分の1)保険と税が一体となった社会保障制度になっていること。
四.社会保障と財政に関する主要な問題点
社会保障給付の財源を何に求め、これをどのような方法で調達し、給付に必要な財源をいかに確保するかが重要となります。
我が国の社会保障は、長期的には、世界でも顕著な少子・高齢化の進行、さらには総人口の減少といった厳しい環境の下、短期的には、出口の見えない経済低迷が続く中で、社会保障の費用を誰がどのように負担するかという問題は、世代間・世代内で鋭い対立を招きつつあります。基礎年金や老人医療を税でまかなうべきか、それとも社会保険方式を堅持すべきか、といった問題も政治的にも大きな争点となっており、財政の在り方をどのように考えるかがこれからの社会保障制度の在り方を決するといっても過言ではないとされています。
五.税方式と社会保険方式
社会保障の方法として、(1)社会保険方式の仕組み、(2)税財源による仕組みのどちらがよいか議論されていますが、税方式及び社会保険方式の主張は次のとおりです。
(1) 社会保険方式の主張
① 保険料負担の方が引上げに際して国民の合意を得やすい。
② すべて税でまかなおうとすると巨額の税財源(消費税率の大幅引上げ)が必要
③生活保護制度と類似の性格をもつことになる(第二生活保護制度化)。
(2) 税法方式の主張
① 社会保険料を払わない(払えない)ことにより給付が受けられないという事態を避けられる。
② 保険料徴収にかかる莫大なコストの削減
③ 既に相当高額になっている社会保険料負担の引上げは景気に対してマイナスに作用
<参考文献>
衆議院憲法調査会事務局「財政(特に、国民負担率の問題を含む社会保障の財源問題、国会による財政統制)」に関する基礎的資料
(完)