№94 配偶者の「103万円、106万円、130万円」の壁

2016.09.30 配偶者の「103万円、106万円、130万円」の壁

所得税法において、各種所得の金額は「収入金額-必要経費」という算式で計算します。

給与所得者には必要経費として最低65万円の給与所得控除額が認められています。正社員でもパート社員でも同じ扱いです。

したがって、妻の給与収入金額が103万円の場合、103万円-給与所得控除額65万円=38万円が給与所得の金額となり、そこから基礎控除38万円を控除すると妻の課税所得はゼロとなります。したがって、妻本人に所得税は課税されません。

次に、夫は妻の合計所得金額が38万円以下であれば配偶者控除として38万円の所得控除を受けることができます。

つまり、妻の給与収入が103万円以下で、妻に給与以外に他の収入がなければ、妻本人に所得税は課税されず、かつ、夫も配偶者控除として38万円を夫の所得から控除できるわけです。

■これが給与所得者である妻の「103万円の壁」と呼ばれるものです。

ところが、今、この配偶者控除を廃止することが自民党の税制調査会で検討されています。
そして、配偶者控除の代わりに夫婦控除を新設することが有力視されています。
夫婦控除は、妻の所得に関係なく所得から控除される制度なので、年間の給与収入「103万円の壁」を気にすることなく妻は働くことが出来ます。
共働き夫婦世帯にメリットのある夫婦控除が導入される理由は、子育て支援の拡充と併せて二本立てで少子化対策を行おうというものです。

しかし、この話はこれだけでは済みません。

■所得税の「103万円の壁」と同じように現行の社会保険制度には「130万円の壁」があるからです。

「130万円の壁」とは、妻の年収が130万円を超えてしまうと、たとえパートであっても社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しなければならないので、社会保険手続き上、夫の扶養から外されて妻自身で社会保険料を支払う必要があります。

130万円未満であれば、健康保険料の支払いもなく医療を受け、また国民年金では第3号被保険者となりますので、年金保険料の負担なしで老齢年金を受け取れます。

所得税の「103万円の壁」よりも社会保険の「130万円の壁」の方が共稼ぎ夫婦にとって大きな問題なのです。

■さらに2016年10月1日からこれまで以上の問題が発生します。

2016年10月より社会保険の「130万円の壁」が「106万円の壁」になったのです。

社会保険(健康保険・厚生年金)の加入要件は週の労働時間で決まりますが、法改正により、従業員数500人超の企業に1年以上勤務する人は、労働時間だけでなく、106万円の年収も加入要件に追加されました。

つまり、大企業に勤務する妻の年収が106万円を超えると、妻自身が社会保険に加入しなければならなくなるため、夫の社会保険の被扶養者から外れてしまうのです(従業員500人以下の中小企業は130万円の壁のまま)。

■社会保険の加入要件は以下のように変更されました。

<2016年9月まで> 
・週30時間以上勤務(正社員の所定労働時間が40時間以上の場合)   

<2016年10月1日以降>
①週20時間以上勤務
②賃金月額8.8万円以上(年収106万円以上)
③勤務期間1年以上
④従業員数500人超の企業(被保険者数)
⑤学生は除く

※今は、従業員数500人超の大企業に1年以上勤務する人に限られていますが、今後おそらく対象が拡大されるでしょう。

(完)

おすすめ