№195 新リース会計基準(借手側)

2025.05.06

2024年9月、企業会計基準委員会(ASBJ)は「企業会計基準第34号 リースに関する会計基準」を公表しました。これにより、日本の会計基準は国際会計基準(IFRS)と足並みをそろえることになります。
具体的には、リース取引はリース(変更後)、リース資産は使用権資産(変更後)、リース債務はリース負債(変更後)と名称が変更し、借手の会計処理は、原則として、すべてのリースを使用権資産にかかわる減価償却費およびリース負債にかかわる利息相当額を計上する単一の会計処理に改定されます。
ただし、一定の大会社のみが対象となるので、大半の中小、中堅企業にとって新リース会計基準の影響はありません。

1. 現行のリース会計基準

現行のリース取引の定義は、特定の物件の所有者たる貸手が、当該物件の借手に対し、合意された期間(リース期間)にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意されたリース料を貸手に支払う取引をいいます。
リース取引は、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類されます。

ファイナンス・リース取引とは、リース契約に基づくリース期間の中途解約が不能のリース取引で、借手が、リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを借手が負担するリース取引をいいます。
また、ファイナンス・リース取引は、所有権移転リース取引及び所有権移転外リース取引に区分されます。
借手は、所有権移転外ファイナンス・リース取引の開始日に「リース資産」及び「リース債務」を貸借対照表に計上します(注1)。

オペレーティング・リース取引とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいます。中途解約が可能で、リース物件の修理・メンテナンスを貸手が負担するリース取引をいいます。借手は、支払リース料を費用として計上し、貸借対照表には「リース資産」及び「リース債務」を計上しません。

(注1)ファイナンス・リース取引における簡便な会計処理方法
① リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引は、賃貸借処理できます。
② リース期間が1年以内のファイナンス・リース取引は、賃貸借処理できます。
③ 企業が、重要性が乏しい一定の基準額以下の減価償却資産について、購入時に費用処理する方法を採用している場合、個々のリース物件のリース料総額がその基準額以下のファイナンス・リース取引は、賃貸借処理できます。

2. 新リース会計基準

新リース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。ただし、新リース会計基準の適用対象は、上場企業など金融商品取引法の適用を受ける企業グループ各社と、会社法上の大会社など会計監査人を設置する企業で、いわゆる監査法人等の会計監査を受ける企業となります。

新リース会計基準では、「リースとは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する権利又は契約の一部分」と定義されました(会計基準第6項)。
この定義に該当する契約では、原則すべてのリースにおいて、借手の会計処理は使用権資産及びリース債務を計上し、使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息費用を計上する会計処理を行います。

リース会計基準の改正による主な変更点は、以下の3点です。
① オペレーティング・リースについても、使用権資産・リース負債の計上が求められる。
② ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引が区別されなくなる。
③ リース期間の延長や解約を踏まえ、リース期間を測定することができるようになります。

3.税法上の取扱い

借手は、原則、リース会計基準に基づいて行った会計処理に基づき税務上の処理をします。ただし、法人税法上は、オペレーティング・リースは従来どおり賃貸借処理を継続し、リース料に係る債務の確定額を損金算入します。

また、ファイナンス・リースは、法人税法上、売買取引があったものとして取扱われるので、消費税についても、売買取引があったものとして取扱われます。リース料にかかる消費税は、リース取引開始初年度にリース料総額に係る消費税を一括して仕入税額控除します。
オペレーティング・リースのリース料は支払いの都度、仕入税額控除(分割控除)します。

すなわち、税法では、従来通り、ファイナンス・リースかオペレーティング・リースか、といった判定を行う必要があり、新リース会計基準で会計処理をする場合には、法人税法上の処理との不一致については別表において申告調整をすることになります。

特にオペレーティング・リースについては、新リース会計基準では基本的に全てオンバランス(資産計上及び負債計上)が必要となりますが、法人税法ではオフバランス(賃貸借処理)を行うため申告調整が必要になります。

リース期間が経過するにつれて、加算/留保した申告調整額を認容(減算/留保)する必要があるため、リース取引ごとに管理が必要になります。

(完)

おすすめ