№02 事業承継税制(認定中小企業の相続税の納税猶予制度)について
2009.04.18 相続税/中小企業経営承継円滑化法/民法の特例
事業承継税制(認定中小企業の相続税の納税猶予制度)について
平成21年度税制改正において「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」が創設されました(措法70の7)。
経営承継相続人が、相続により経済産業大臣の認定を受ける中小企業の株式を取得した場合には、その相続人が納付すべき相続税額のうち、その株式に係る課税価格の80%に相当する相続税額の納税が猶予されます。
ただし猶予されるのは、その相続人が相続開始前から既に保有していた株式を含めて、その会社の発行済株式総数の2/3までの部分です。また、納税はあくまでも猶予されているだけです。その相続人は、その株式を死亡の時まで保有し続けなくてはなりません。
ただし5年間経過後は、次の場合に猶予税額の納税が免除されます。
①その会社に破産手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合
②次世代の後継者へ特例適用株式を贈与し、贈与税の納税猶予制度の適用を受ける場合
③同族関係者以外の者に特例適用株式を一括譲渡した場合に、その譲渡対価又は譲渡時の時価のいずれか高い方が猶予税額を下回るときの差額分
しかし次の場合は、猶予税額の全額を納付しなければなりません。
①5年間内に、その相続人が代表者でなくなった時や雇用の8割以上を維持しなかった時
②5年間経過後に、特例適用株式を譲渡した場合(譲渡した割合に応じた猶予税額)
さらに、猶予税額を納付する時には利子税(現行年 3.6%)が加算されます。
私見として、以下の理由でこの制度の実効性は乏しいと思います。
① 経営を承継する相続人が、「相続開始前」に遺留分権利者(法定相続人のうち兄弟姉妹を除いたもの、すなわち、配偶者、子、直系尊属)全員の合意を得なければならない。例えば遺留分権利者がABC3人の場合、後継者Aが、B・Cにその同族株式について「相続発生前」に相続放棄の合意書をもらうという意味で、これは簡単なことではないでしょう。
②経済産業大臣等に対する所要の手続き(確認・認定)が煩雑すぎる。さらに相続後5年間は毎年、その後は3年毎に継続届出書を税務署長に提出しなければならない。
③相続した株式を譲渡した場合には、猶予されていた税額を全額納付し、かつ現行年3.6%の利子税を支払うというリスクがある。例えば100万円の納税猶予を受けた場合、年3.6%で複利計算すると20年後の利子税は100万円になり、20年後に相続した株式を譲渡した場合には、利子税も含めて200万円の納税額になってしまう。つまり当初の相続税の二倍の納税となってしまう。
④納税猶予の適用を受けるためには、相続税の申告期限までに、相続税額に見合う担保を提供する必要があり、その手続きも煩雑であること。
中小企業庁ホームページの制度の概要をご参照ください。
(完)